DESIGN IT! Conference 2006 Spring  受講報告    

CMSにみる ITデザインの可能性 ―
                        06/ 4/21 Fri 
・開催日時・場所
  2006年4月11日(火)〜12日(水)
  秋葉原コンベンションホール

・概要及び評価

 非常に内容が豊富で充実していた。講師が粒ぞろいであったことと説明する
 内容がよく準備されていてとても勉強になった。プレゼン資料も配布されたが、
 少し画像が細かいことを除けば問題なし。特に付録資料が充実していたのに
 は驚く。
 この催しはソシオメディア株式会社が取りまとめているが、この会社とは
 UI技術動向把握も含め今後何らかの形でつながりを持つべきだと強く思う。
 篠原社長とは面識があるので、彼の人脈と行動力を上手く活用したい。
 http://www.sociomedia.co.jp/
 
・主な講演内容
 
 Peter Morville
  Ambient Findabillity
  
  現在進行形で進んでいるウェブの大きな変革と、フィジカルな現実世界とを
  結びつける新しい時代の情報設計のあり方を簡明に説明。 
  「ジオスペーシャルなウェブの出現によって、我々の周りに存在する全てが
  ファインダブルなものとなっていく中で、人々はお互いに手を携えながら
  集合的な知性をつくっていくだろう」という展望は、ユビキタスコンピュー
  ティングが我々にもたらすことの本質をついているのかもしれない。
  →興味深い内容に、思わずファインダビリティに関する彼の書籍を購入して
  しまった。
  『アンビエント・ファインダビリティ 』
  出版:オライリー・ジャパン 4月20日出版


  
 MS 磯貝直之
  ユーザーエクスペリエンス最適化のための取り組み及びテクノロジー
  
  MS社内で取り組んできた独自のペルソナ・シナリオ法やユーザビリティテスト
  などの活動を説明。その上で、新しい動きとして「WPF」や「XAML」と
  いった同社が提唱するテクノロジーがもたらすユーザーエクスペリエンスの
  可能性をデモンストレーションを通して紹介。これらの新しい技術によって
  「デザイナーとエンジニア間での連携を容易にし、エキサイティングな
  ユーザーエクスペリエンスを実現するだろう」と語る。
  →MSのプレゼンにしては抜群に面白いものだった。凝ったデモを行ったから
  でもあるが、Ajax対応のXAMLはかなり期待できそう。これらを含めた
  「Expression」というツールが面白い。デザイナーとデベロッパーの
  コラボレーションを向上させることは是非とも必要なことである。 
  
 日本IBM 山崎和彦
  UCDとユーザーエクスペリエンス
  
  半世紀におよぶIBMのデザインの歴史を踏まえながら、これまで注力してきた
  氏のデザイン活動が人間中心の手法から、よりユーザーの全体的な経験を
  トータルに捉える考え方へと発展してきたことを実例を交えながら解説。
  より「気持ちのいい体験」を提供するスマイルデザインを実現するアプローチ
  として、アートのような作り手の感性に基づく方法や、感性的な表現から
  論理を導き出す方法、それに工学的に感性を捉える方法の3つがありそうだ
  との仮説を提示。
  → こういう人物がいることがIBMの強さかと思う。
  話も面白いが実に自信にあふれたデザイナーである。NECにこんな人物は
  いるのかなと考えてしまう。
  
 Bob Doyle
  欧米における CMSの現在 コンテンツマネジメントのための新しい国際的
  実践コミュニティ「CM Pros」

  「今や、世界中で2000を超えるCMS製品が存在している」と指摘。
  特に欧米のCMS市場では、オープンソースへの高い注目、ASPWebサービス
  隆盛、そしてグローバリゼーションが進んでいるほか、コンテンツとデザインを
  分離した形で記述できるXMLエディターの利用も増えつつあると、最近の動向を
  整理。また、氏が取り組んでいる「CMS Review」や「CM Professionals」の活動
  紹介を通して、多彩な製品に対する的確な評価や用語の定義、専門家同士の交流
  の重要性を指摘。ここで掲げられた情報は有効。
  
 オ・ゼチョル I−ON CommunicationsCEO
 
 韓国のCMS第一人者であるオ・ゼチョル氏によれば、アジアのCMS市場は欧米とは
 違ってウェブコンテンツのマネジメントシステムに特化している。
 さらに日韓でもユーザーニーズや利用実態で大きな違いがあると指摘。
 「CMSは魔法のツールではない」との持論に従い、最終的なゴール設定や明確なロード
 マップの策定など、システム導入を成功に導くには9つの条件があると語る。
 また、日本はまずは氾濫している技術用語や概念の整理、成功事例の共有、交流
 コミュニティの確立が急務だと提言。
 →この人がNORENの生みの親。実にバイタリティのある活動的な人物であり
  CMSに一家言を持つ。プレゼンも慣れているようで話しによどみがない。
  日本でのCMS導入状況の特異性を強調。これは知らなかった。
  CMS導入を成功に導くファクターとして彼は以下の9つのファクターを強調。
  1.Finding pain point.
  2.Define user's needs
  3.Drive organization
  4.Organize contents
  5.Define target web sites & final goal
  6.Project roadmap
  7.Information architecture
  8.Integration plan for legacy sysytem
  9.Define business process & workflow
  
 日本における CMS の現在
 国内ITソリューション企業による CMS プロジェクトの実際
  
  国内でCMSを使ったウェブサイト構築を手がける4社の実例報告をもとに、
  海外ゲストも交えながら、CMS導入プロジェクトの成功要因や直面している
  課題について突っ込んだ議論が行われた。
  プロジェクト成功のポイントとしては、「シンプルに始めること」
  「リーダーシップの確立やモチベーションの維持向上」「クライアント側と提供側
  での役割分担」といった発言があったほか、導入を検討するユーザーに対しては
  「異なる部門にまたがる調整や推進役を確立する」「漠然としていてもいいから
  最終的なゴールイメージを描く」「なるべく早くに相談を」といった要望が出た。
  →プレゼンで興味をひいたのはDOEの田中氏とメディアブローブの渡辺氏。
  両者とも実績に基づく発言に重みが感じられた。
 
 
 以上